マイレージ、マイライフ UP IN THE AIR

 

directed by Jason Reitman

cast : George Clooney  Vera Farmiga

Anna Kendrick  Jason Bateman

Amy Morton  Melanie Lynskey

J. K. Simmons  Sam Elliott

Danny McBride  Zach Galifianakis

('10 04 04)

 

 

 主人公ライアン(ジョージ・クルーニー)の仕事は飛行機でアメリカの各地へ飛び回り、行く先々の様々な企業で社員にリストラを宣告すること。1年のうち300日以上を出張で過ごし、「空港が我が家」 とうそぶく彼の生き甲斐は飛行機のマイレージを貯めることで、出張先で出会った女性アレックス(ヴェラ・ファーミガ)との割り切った関係を楽しんだりと、気ままな独身生活を謳歌する中年シングル男性だ。そんな彼が新卒の新入社員ナタリー(アナ・ケンドリック)の登場や、妹の結婚式をきっかけに、今までの自分の人生の虚しさに気がつき、生き方を変えようとする。

 

 という、いかにも最近流行りの 「生き方見直し系」 ストーリーだが、脚本と監督が 『サンキュー・スモーキング』 のジェイソン・ライトマンだけあって、リストラ宣告人という職業に目をつけて不況の今の時代を切り取りながら、どこか孤独な現代人の姿を、あからさまではないユーモアを持たせて描くあたりのセンスはさすがで、ありきたりの 「生き方見直し系」 ではない、ちょっとヒネリの効いた話になっている。ナタリーは、リストラ宣告を本人のもとに直接出向くのではなくネット経由のパソコン画面越しで宣告してコスト削減を提案するという、いかにもネット世代、メール世代の若者の発想で分かりやすいキャラクターなのだが、ナタリーとは反対に、リストラ宣告は直接本人と対面してするべきだというライアンの方がプライベートでは深い人間関係を避けようとしていて、逆にナタリーの方が人との関わりを大切にしようとする構図も面白い。

 

 秀逸なのが、「割り切った」 男女の関係を楽しむライアンとアレックスの描き方。2人の出会いは出張先のホテルのバーだが、会話が弾むきっかけが、アレックスが持っていたレンタカーのキーというのがユニークだ。どこそこのレンタカーは使える、どこそこのレンタカーは使えないという話で打ち解けた2人は、お互い同じような人種であることを嗅ぎ分け、財布の中のカードを見せ合って盛り上がり、そのままライアンの部屋でベッドイン。ここらへんのかけ合いが絶妙で、そこから始まる2人の大人な関係が、ナチュラルで素敵に見えてくる。というか、アレックスを演じるヴェラ・ファーミガが上手くてカッコイイのだ。登場シーンからしてデキる女風で既にカッコイイのだが、ただのデキる女ではなく人間味のある大人の女性としてアレックスを演じていて、内面からカッコよく見える役作りが上手い。ラストを予感させる、中盤での微妙な心の機微の出し方も絶妙で、そんなアレックスのキャラクターが成り立っているからこそ、ハッピーエンドで終わらない2人の関係に納得できるし、最後にアレックスが電話越しにライアンに言うセリフの中にある大人の優しさが見えてくる。彼女のオスカー候補は大いに納得だ。

 

 ここまで褒めておいてなんだが、アレックスとライアンの関係がよく描けてただけに、話の終わらせ方はもうちょっと書き込めたんじゃないかというところが残念。お約束通り、最後にはライアンが生き方を見直すわけだが、ライアンに影響を与えているはずのナタリーとの関係がイマイチ描ききれてなくて、ラストのライアンの行動がちょっと突飛に思えてしまった。ナタリーとライアンのエピソードは良かったし、ナタリーを演じるアナ・ケンドリックも好演してたので、あと一息だったと思うんだけど。