バニラ・スカイ VANILLA SKY


directed by Cameron Crowe

cast :  Tom Cruise  Penelope Cruz
Cameron Diaz  Kurt Russell
Jason Lee  Noah Taylor
Timothy Spall  Tilda Swinton
Michael Shannon  Delaina Mitchell
('01 12 31)



 僕はトム・クルーズが嫌いだ。いや、最近のトム・クルーズの演技が嫌いだ。オスカーにノミネートされて絶賛された『ザ・エージェント』や『マグノリア』の演技を観た時も白けてしまったクチだ(『マグノリア』は作品の力で何とかなったが)。確かにあの笑顔は強い。あんな顔で微笑みかけられたら誰だっていい気分になるだろう。だが、彼の手の動き、目の細め方、体の曲げ具合、顔の振り方、逆上するタイミング、視線の方向、全てが予測できてしまう。つまり、いつも同じ。

 今回彼が演じるのは、若くして出版社の社長となったデイヴィッドだ。金はあるわ、顔はいいわ、カリスマ性はあるわ、女にもてるわ。うん。非常にトムらしい役柄ではある。デイヴィッドはセクフレのジュリー(C・ディアス)とセックスに明け暮れる毎日だが、パーティーで親友ブライアン(J・リー)が連れてきたソフィア(P・クルス)に一目惚れ。初めて落ちた恋。その心変わりに気づいたジュリーは、彼をドライブに誘うと猛スピードで崖に突っ込んで心中を図った! 奇跡的に助かったデイヴィッドだが、顔は無残に崩れ、それから彼は奇妙な体験をすることになる・・・と、サスペンスのような、ラブロマンスのような、ドラマのような、不思議な作品だ(「不思議」と人間が言う時は、大抵それを理解しきれていない時だと思う)。この映画の中でトムの演技に納得できたのは、デイヴィッドがソフィアの家で見せる優しさ。そう。人間の素の優しさ的なシーンに、彼の笑顔は非常に有効なのだ。そりゃぁペネロペ・クルスもトムにフォール・イン・ラブするだろう。キャメロン・クロウ監督は『ザ・エージェント』でもこの笑顔を使っていた。だが、それ以外のシーンの彼の演技には飽きてしまう僕。ちょっと辛いんだよねー、彼が主役の映画って。『バニラ・スカイ』を観ていて、つくづくそれを実感しました。

 キャメロン・ディアスはいい。彼女は主役級のスターなのに、助演にまわると主役級のオーラが消える。『マルコヴィッチの穴』でもそうだった。この人はどんな役でもこなせてしまうんだろうなと思わせてくれる。ペネロペ・クルスも今まであまり好きじゃなかったのだが、そうか、この人はかわいいんだということに気がついた。トムがニコールを捨ててフォール・イン・ラブしたのも、このかわいさ故だろうな。スペイン訛りの英語がまたイイし。
 謎の男を演じるノア・テイラーは、『あの頃ペニー・レインと』にも出てたし、『トゥームレイダー』でもいい味を出していた。面白い役者で注目度大である。

 複雑な構成を取りながらも、この映画は普遍的なテーマを持っている(と思う)。「自分の人生を人と共に悔いなく生きろ」 キャメロン・クロウ監督の得意分野っぽい。観る前は、この人サスペンス大丈夫なのーとか不安だったが(観てる間も彼の通な選曲が裏目に出て心配で心配で)、ここ一番のシーン(エレベーターホールのトム)の音楽の使い方と演出が上手くて驚いた(失礼)。けど前半緩慢。オリジナルは観てみたい。P・クルスはオリジナルでもあの笑顔なんだろうか。





今、ちょっとばかし注目。Noah Taylor。

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