宇宙戦争 WAR OF THE WORLDS


directed by Steven Spielberg

cast :  Tom Cruise  Dakota Fanning
Justin Chatwin  Tim Robbins
Miranda Otto  Rick Gonzalez
Morgan Freeman
('05 07 08)


 宇宙人が突然地球侵略を始め、人間が慌てふためくパニック・ムービーと言えば 『インデペンデンス・デイ』 があったが、今度の地球侵略はエメリッヒじゃなくてスピルバーグ。ハッキリ言って、格が違う。こっちの方が断然ホンモノである。

 最近のスピルバーグの映画を観る度に、フィルムメーカーとしてのスピルバーグの凄さを実感するが、今回も例外ではない。というか、今回はスピルバーグの自信がもうアリアリと伝わってきます。冒頭、雷が何度も落ちるだけのシーンでも恐怖を煽るが、その後に例のモノが登場して、街を破壊し始めるシーンの恐ろしさと言ったら、容赦ない。何の説明もなし。突然日常に襲ってくる恐怖。今回のスピは、そこを描くのに徹した。『ジュラシック・パーク』 の恐竜とは質の違う怖さだ。この宇宙人の無差別攻撃、どう見てもテロやアウシュビッツを意識しているし、そこらへんがスピルバーグらしいが、そんなもの考えなくても十分恐ろしいのも、やっぱりスピルバーグらしい。まず映画はエンターテインメントだからね。そして、映画の中で一番ショッキングで怖いのが、この冒頭のシークエンス。つまり、いきなり最初にクライマックス持ってきておいて、それでも120分面白い。こんなこと、誰ができるかね、ていうか、するかね。もう、自信タップリのスピルバーグなのです。

 『宇宙戦争』 が 『インデペンデンス・デイ』 と決定的に違うのは、例え主役が“スター”トム・クルーズであっても、彼をヒーローにしなかったことだ(ヒーローどころか結構情けない)。『宇宙戦争』 は、決してヒーロー賛歌なんかにはならない、ただひたすら宇宙人侵略の恐怖を描いたパニック・ムービーなんである。なので、スピお得意の家族愛もおまけに過ぎないし(まともに見たらかなり底の浅い描き方だ)、え? これで終わるの? というラストも、それでよし。『ジュラシック〜』 でも最後の決着のつけ方に納得いかなかった人が多かったと思うが、大団円のような大袈裟なラストよりも、観ている観客を怖がらせること、それがスピルバーグにとって重要であって、観客にとっても重要なのだ。実際、宇宙人を爽快に倒すシーンはほとんど存在しないし、楽しくてエキサイティング! なんて瞬間もほとんど存在しない。残虐な宇宙人からトム・クルーズがひたすら逃げるだけ。その点で今までのスピの娯楽映画と大きく違うけど、それでも面白いのよ〜 やっぱり作り方上手いのよ〜

 他にもスピの上手さを再認識するシーンは多い。観客を怖がらせるためには、観客に想像力を与えることが大事だと分かっているスピルバーグ。今回観てて本当に怖くなるのは、宇宙人が攻撃している姿ではなく、それを見て恐怖で凍りつく人々、逃げ惑う人々の姿(表情)だ。ただ何でも見せりゃいいってもんじゃない。また、『ジュラシック〜』 のハイワイヤー・スタントのシーンのように、襲ってくるものだけで怖がらせる必要がないこともよく分かっている。今回も、トム・クルーズの家族が乗ってる車を人々が襲い出すシーンを間に挟んだりして、違った恐怖を煽る。もちろん、派手で大掛かりな爆破シーンで突然映画がリアルじゃなくなるなんてこともスピに限ってありえない。一見大掛かりなシーンでこそディティールを見せて、恐怖を描くのだ。あぁ。やっぱりスピルバーグって偉大っていうか、映画作りのバイブル。

 『マイノリティ・リポート』 のトム・クルーズは良かったけど、今回はどうってことなかった。まぁ、役が役だからね。最初の方で例のモノから全速力で逃げるシーンは、全身力入ってて非常にトムらしかったが。今まで全然好きになれなかったダコタ・ファニングは、ずっとキャーキャー騒いでて鼻につく役だったけど、上手さは鼻につかなくなった。さすが 『A.I.』 で天才子役のハーレイ君を無表情なロボット役に抜擢したスピルバーグ。子役の使い方も上手い。そう言えば、ジュラパでも子供二人の演技が怖がらせてくれたっけ。ティム・ロビンスは別に彼じゃなくてもよかった。そもそもティムは、こんなヒドい役で納得したのか? 関係ないが、ティム・ロビンスの家でアナコンダみたいな機械が入ってくるシーンは、『ジュラシック・パーク』 の台所でのラプトルのシーンと一緒で可笑しかった。他にもスピルバーグ集大成みたいなシーン、カメラワークがあって、そこらへんも面白い。

 とは言っても、スピルバーグが作ったという点では、もっとショッキングでエキサイティングな映画を期待する節も多いはず。その点で同時期公開の 『スター・ウォーズ EP3』 に大きく差をつけられそうだが、でもやっぱりこんな風に映画作れる人いないし、こんな映画、なかなかない。この後のスピルバーグは、シリアスな1本で(多分)オスカー戦線に名告りを上げた後、とうとうやって来る 『インディ・ジョーンズ4』! 是非! 是非このままエンターテインメントなムービーを作り続けて頂きたい。





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