奈良大和路旅日記

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壱日目 弐仟捌年玖月拾陸日

 

 

 東京から奈良へは、まず新幹線で京都へ出て、そこから近鉄かJRで奈良へという道程なのだが、1日にそんなに本数が出ていない海外旅行の飛行機と違って、新幹線は出発時間が自由に選べるのがいいところ。今回は初日もなるべく観光に費やそうということで、朝8時台出発の新幹線に乗り、奈良到着は午前11時頃の予定。これなら午後をまるまる観光に使えます。

 

 予定通り京都で新幹線を降りて近鉄に乗ること30分くらい。近鉄奈良駅に到着したら、まずは今回泊まるホテル、ホテルフジタ奈良へ行って一先ず荷物を預ける。ちなみに奈良駅には近鉄奈良駅とJR奈良駅があって、両駅の間は歩いて10分以上あるのだが、ホテルフジタ奈良はどちらからも歩いて5分くらいのところに建っていて、便利な立地だ。そんな便利なホテルに荷物を預けた後は、三条通り(ホテルの前から奈良公園へ続く通り)沿いのモスバーガーで昼を食べながら、今日の観光予定を相談。ちょうどさっき、京都から奈良へ向かう途中で電車の中から平城宮跡が見えたので、先ずは平城宮跡へ行こうという話に。平城宮跡は近鉄の大和西大寺駅(奈良駅から二駅)が最寄りなので、ついでに西大寺に寄って、そこから平城宮跡まで歩き、そのまま二駅分を歩いて奈良へ戻りがてら、ちょこちょこ途中にあるお寺に顔を出すという予定にした。奈良のガイドブックで言う、「佐紀・佐保路」 の旅だ。

 

 西大寺は大和西大寺駅を降りてすぐのところにある。 今思うと何てことない古寺なのだが、境内を歩いている時は、あぁ、これが奈良のお寺の歴史ある雰囲気なのかと思いながら歩いていた。

 

奥が本堂で、手前は東塔の基壇跡。

空の広さが奈良っぽいというか、都会っぽくないというか。

 

口から涎を垂らしてるように見える手水舎の龍。

 

突然現れた毒々しい色の観音様にびっくり。

 

 西大寺を後にして、次は平城宮跡へ。この日の奈良は最高気温30℃行くか行かないかの普通に暑い日で、日陰は涼しいけれど直射日光を浴びると途端に汗だらだらという気温。そんな中、途中で道に若干迷いながら20分ほど歩いていたら、目の前にだだーっと広がる空地にぶつかる。これだ。これが世界遺産の平城宮跡だ。

 

道路の向こう側は世界遺産。世界遺産を近鉄が横切ります。

 

ちゃんと標識も建っている。

例え近鉄が横切っていようとも此処は平城宮跡なのだ。

 

 近鉄の線路が敷地内を横切ったりしているので、何も知らないで歩いていたらただの空地と思って素通りしてしまいそうだが、この空地が立派な平城宮跡なのである。「何と(南都)立派な平城京」、もしくは 「納豆食べたら平城京」 の西暦710年、今から約1300年前のここには当時の首都とも言える大きな都があったのだ。この日は敷地内にある平城宮跡資料館が休館日だったので、あまり詳しいことは分からなかったのだが、手元の資料によると平城宮跡は南北に1km、東西に1.4kmの広さ。中には現在復元中の第一次大極殿跡や、既に復元された朱雀門、東院庭園などがあり、歴史に思いを馳せながらその広大な空地を歩くわけだが、基本的に草ぼうぼうで、一応人が歩けるように石造りの道があるのだけど、その道を歩くと何かが道から草むらの方へ飛んでいく。何だろうと思ったらバッタやイナゴで、気づき始めると本当にたくさんのバッタが道に止まっていた。目の前ではトンボがたくさん飛んでいて、何だかこういう日本の自然的なものに最近全く触れていなかったので、歴史よりも自然を体感するコーナーになってしまった。周囲を見渡しても高層ビルなどなく、奈良を囲む山々が四方に見えるだけ。歴史と自然を素朴に感じられる。奈良はそういう町なんだなぁ。

 

こんな感じの草原が続きます。

向こうに見えるのは復元された朱雀門と近鉄の線路。

 

第一次朝堂院跡から東側を臨む。

あの山々は奈良時代にも見えていたのだろうか。

 

朱雀門を目の前で。復元されてまだ10年なので新しい。

 

朱雀門の前に広がる朱雀大路跡。幅74mもあったそうな。

 

 この他、第二次大極殿や内裏、宮内省の跡なんかを見ながら1時間くらい平城宮跡の中を歩いた後は、ホテルへ戻る途中にある法華寺と海竜王寺へ行くことに。

 

 法華寺は民家が並んでいる細い小路を入ったところにある、ひっそりとしたお寺さんだった。拝観料として500円取られたりするんだけど、観光とはほとんど無縁な感じ。本堂に入ると本尊の十一面観音立像の模刻像や他の彫像を拝めるのだが、僕らが本堂に入ってしばらくしてから慌ててお寺のおばさんが一人入ってきて説明のテープを流すという、ホームメイド感あふれるサービスだ。そして本堂の他にも華樂園という庭園など、いくつか見どころがあるけれど、庭園の入り口の門を今まさに工事しているところだったり、花木はほとんど手入れされてなくて美しくなかったりと、これまたホームメイド感でいっぱい。まぁ、奈良公園からちょっと外れたところにあるから、あまり観光客とか来ないんだろうな。

 

華樂園の中に咲いていた花。

面白い形だったので撮ったんだけど、何ていう花だろう。

 

 次の海竜王寺は、法華寺から歩いて数分。歴史を感じずにはいられない造りの塀や、正門をくぐった後の鬱蒼とした木々、車通りが結構多い道路から入ってすぐとは思えない静けさが独特の雰囲気で良かったのだが、法華寺のがっかり感が残っていたのと歩き疲れていたのとで、入場料を取られる境内には入らず、セルフ門前払い。

 

この門の先が海竜王寺の境内。左側の塀がいかにも古そう。

 

 ということで、今日のところはこれくらいにしてホテルまで歩いて帰ることに。これまでに暑い日差しの中を結構歩いたので(2時間半ほぼ歩きっぱなしで、更にこれから30分くらいかけてホテルに戻るのだ)、途中でお茶でも飲もうということで新大宮駅(近鉄の大和西大寺と奈良の間の駅)前で見つけたケーキ屋さんに入った。ホテル葉風泰夢というところの1Fにある、「ラ・ポーズ」というお店。巨峰のタルトを食べたのだが、巨峰にカスタードクリームという初体験の組み合わせが意外にマッチしていて、ちょっと小さいのが残念だったけどなかなか美味しい。他にもオリジナルケーキがいくつか並んでいて、近くに住んでたら定期的に行ってるかも。

 

 ホテルに戻ってチェックインした後は、歩き旅の疲れと早起きのせいか(朝8時過ぎ出発の新幹線だったので6時半起き)気づいたら2時間以上寝ていた。このまま寝続けていては夕飯を食べに行けないので、何とか起きてガイドブックで食べるところを探す。ちょうどホテルのすぐ近くに蕎麦屋さんがあるみたいなので、そこへ行くことにした。

 

 「ぜい六そば」 というお店で、本当にホテルのすぐ隣の隣にあったんだけど、店構えを見てびっくり。どう見てもどこにでもあるただの定食屋風飲み屋だ。そして店内に入るとますますその感が強くなる。メニューも蕎麦屋と言うより何でも屋。出前とかやってそうな感じだ。しかし持ってきた奈良のガイドブック2冊の両方に載ってるくらいだから、ひょっとしたら職人の手による舌鼓を打つような美味しさが待っているのかもしれない、という期待さえも抱く気になれない店内の様子で、客もまばらだし、仕事帰りの酔っ払ったサラリーマンとかいるし。味は普通に美味しかったけど、ガイドブックに載せるべきお店は他にあるでしょう。ちなみに店の前にはバイト募集の貼り紙がしてありましたが、そこには 「女子学生募集」 という文字が。女子学生を募集って、何の商売ですか。

 

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